Works

2007.06.13

BIO-MORPH-MUYBRIDGE

イギリスの写真家であるマイブリッジを題材に、柴山氏はCD-ROMによるアンビエントムービーを制作した。この新しいジャンルともいえる氏の作品について、制作にいたる動機から作業上の苦労までを紹介していく。





MYBRIDGE制作の動機
マイブリッジはイギリス生まれのカメラマンであり、彼自身、殺人罪に問われながらも動物や人物の動きの形をスチールカメラで撮影し続けた人物である。
柴山氏はマイブリッジの記録写真そのものではなく、彼が撮ることのできなかった写真と写真の間の幻影に注目した。したがって、彼の撮った画像を素材としながらも、全く違った視点とバイオモルフと呼ぶ独特の手法を使い、

マイブリッジの考え方を突き抜けることによって、氏の個性をその中に盛り込んでいった。
また、CD-ROM版MUYBRIDGEを制作していくことによって、氏の中で、マルチメディアとは何か、何がどうマルチメディアなのか、そしてグラフィックデザイナーという立場からマルチメディアというものへのアクセスが可能なのかを、自分自身確認したかった、ということがある。
「しかし、つい最近までX軸とY軸という平面性しか頭になかった僕としては、ムービーの時間軸を取り入れた動く画像を、単に平面の中に移し変えることだけを仕事にしたくはなかったんです。つまり、写真をスキャニングしてMacintosh上のモニターで見るのが写真集で、QuickTimeのフォーマットに落としてMacintoshで見るのがマルチメディアなのだろうか?という疑問が湧いてきました」
このような疑問を内包したままMUYBRIDGEは制作されている。そのためか、MUYBRIDGEは失われてしまった幻の時間と空間の中を動物や人間が移動していく、といった不思議な感覚や、時間を捻じ曲げて一秒前の自分から今の自分へ、また今の自分から一秒後の自分へとさながらワープしているような錯覚を見るものに感じさせる作品になっている。

難航したCD-ROM制作
MUYBRIDGEの制作は、構想が92年12月、実質的な作業は93年4月からスタートしている。したがって、完成までには1年弱かかっている計算になる。
使用したソフトは、Photoshop、Illustrator、Shadeなど、モーフィングはMorphを使用して制作した。音声に関してはSound Edit Proを使用し、ナレーションも氏自身が吹き込んでいる。そして完成したグラフィックや音声をDirectorで編集、という手順である。
「音声などは、初め外部に発注しようと考えていました。しかし、制作していくうちにはじめの見積もりの3倍くらい費用がかかることがわかりました。そのため外注費がなくなってしまったんです。ただ、音声に関してもデスクトップ上で作業することが出来るメディアなわけですから、それを生かして自分で作ることにしました」
CD-ROMの作成においては、グラフィック、音声、オーサリングなどの異なる分野の作業が必要になるため、各パートに分かれた分業制で作業が進んでいく、というのが普通であろう。しかし、氏の場合は、出来る限りの作業を自分自身で行っていった。
「MUYBRIDGEのように個的な作品の場合、すべての作業を自分自身で行うことになってしまいます。本当のところ、パーツひとつでも他の人に作ってもらいたかったと思います。しかし、作業の中にコンピュータを取り入れれば取り入れるほど、その作業を自分自身で行っていかなければなくなります。つまり、どうしても最終決定をするものが制作に携わることになるわけです。最終的には、プログラムの部分だけを他の人にやってもらうような作業の進め方になってしまいました」
ゲームメーカーなどが制作を行う場合、まずアウトラインがあり、絵コンテを作り、制作上の問題点についてオペレーターやプログラマーたちと話し合いながら進行していくだろう。しかしMUYBRIDGEの制作においては、製作中に出てくる色々な局面に対して、それをリアルタイムに作品に反映させていく方法(例えば新しいソフトの使用など)をとったため、どうしても組織だった制作環境にはならなかったのかもしれない。

今後の展開について
MUYBRIDGEの制作を通じて氏が感じたことは、640×480というサイズが、非常に小さいものであるということ、CD-ROMの動作スピードが遅いという点であった。とくに、現在の主流である倍速CD-ROMドライブの場合、インタラクティヴ性を表現する上では、やはり不満がある。しかし、この問題はハード的な問題であり、CD-ROMを制作しているもの全てに共通しているため、その限られた環境の中でどれだけベストなものが制作できるかを考えていく必要があるわけである。
「このMUYBRIDGEに関しては、僕自身がクライアントであると同時に制作者であるわけです。ですからこれを見ていただいて、色々と反響があると思いますが、それによってまた新しいものを作るという気になっていくと思います。MUYBRIDGEに関していえば、CD-ROMの制作というのは全体の1/3であり、残りの2/3はこれから始まるのだと考えています」
MUYBRIDGE制作の過程を見ていくと、大切なのは作りたいという欲求であり、それさえあれば必ず道は開ける、とういうことをわれわれに教えてくれる。
氏の作品は、CD-ROMの制作にためらいを感じているクリエーターにとって、ある種のきっかけを与えてくれるのではないだろうか。

「僕らの次の時代、21世紀のアートディレクターやコピーライター達は何か確実に私たちと違うものが要求されるに違いない。それはどの部分をとっても不透明で、何を勉強してもそれが先細りになるのか、太い柱となるのかがわからないが、ぼくらは次の世代の人達が望む、何かを伝えなければならないのであろうか。それはどうすれば出来るのであろうか。マルチメディア、さしあたり、この霧のかかった大海か、小川かわからない中、水面で首を持ち上げ、耳を澄まし、目を見開き、彼方からの情報や技術をどれだけ受け取ることが出来るか、そしてそれを使いこなし、制作し続ける。とりあえずこれくらいの気分を心に刻み仕事を続けて生きたいと思う。そして一番大事なハートのあるメッセージを忘れないでいる21世紀のデザイナーと酒場で話の続きをしたい」
15年前、柴山が制作したCD-ROM「バイオ・モーフエンサイクロメディア」を再び販売します。マックOS 6.07の時に制作したものですが、0S 9でも動作します。金額は送料込みで1万円です。(30部限定)
お問い合わせ先info@4-d.ne.jp
mbridge-package.gif

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